映画

ウォッチメン

愚直なまでに原作そのままのビジュアルに、映画ならではのグッとくる選曲と、セックス&バイオレンスをプラス。膨大かつ深遠な原作コミックの上澄みをすくい取ったプロモーション・フィルムとしてならば、ほぼ文句のない完成度。 しかし、終盤の狂気みなぎる…

ベンジャミン・バトン 数奇な人生

駄作と傑作を律儀に交互に撮り続けてきたフィンチャー監督。だが、ついにそのサイクルが終結する時が来た。 キテレツな主人公がアメリカ史上の有名人や出来事に関わ「らない」裏『フォレスト・ガンプ』の出来は、ずばり「普通」。あえて「普通」なのは分かる…

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

ビューティフル・フリーク 大戦中、ナチスの手で地獄から引っ張り出された「悪魔の赤ちゃん」ヘルボーイは、成長して、アメリカ政府直属の妖怪ハンターになりました。 短気で単細胞、だけどちょっぴりセンチで憎めないボーイと、彼に負けず劣らずユニークな…

OO7/慰めの報酬

『カジノ・ロワイヤル』の続編というか、後編 前編のラストで最愛の女ヴェスパーに裏切られ、その真意を問い質す間もなく死なせてしまったジェームズ・ボンド。彼女を操っていた謎の組織の正体を探るべく、世界を股にかけた血みどろの復讐行が始まる。 それ…

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

っていうか、ルチ将軍? ルー「この意表を衝いたオールディーズなオープニング!アメグラっすよ、アメグラ!」 スピ「ほらほらっ!この音楽!この壊れた木箱からチラッと見えるのは…ねっ?ねっ!」 フォー「はいっ、俺がここで見つめてる写真に注目!く〜っ…

ミスト

あるスティーヴン・キング愛読者の友人への長い長い手紙 拝啓、くまこ様。 毎度ご無沙汰しておりますが、お元気ですか? いただいた年賀状の返事も出せないままで、申し訳ありません。 『ミスト』、ついに公開されましたね。 僕らスティーヴン・キングのファ…

クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者

マタだけはガチ 原恵一監督が『戦国大合戦』で離脱して以来、長い迷走期に入っている映画「クレしん」。シリーズも15作を越えて、作る方も観る方も、いい加減に疲れているのかもしれない。 そんな停滞を打ち破るためか、最初のシリーズ監督を務めた本郷みつ…

アートスクール・コンフィデンシャル

芸術家残酷物語 「偉大な画家に、僕はなる!」。 夢と希望に胸ふくらませて、ニューヨークの美術学校に入学したジェローム。 だがそこは、根拠の無い自信と肥大した自尊心でブッ壊れた、芸術家の(腐った)卵の吹き溜まりだった。 一目惚れした美人モデルの…

アメリカン・ギャングスター

オカンとボクと、時々、マッポ 『ゴッドファーザー』を筆頭に『スカーフェイス』『ニュー・ジャック・シティ』『セルピコ』『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』『フレンチ・コネクション』『グッドフェローズ』『ヒート』『アンタッチャブル』『プリンス・オブ・シ…

ボーン・アルティメイタム

愛もなく、なぜ造った。 現代スパイ映画の新たな領域を開拓し、アクション映画の最高到達点を1作ごとに更新してきたジェイソン・ボーン・シリーズが、トリロジー(三部作)としてこれ以上ないほど見事に完結。 とにかく面白い映画を観たいんだ!という人な…

ストレンヂア 無皇刃譚

あいにく本日、漂泊者 戦乱の世。天涯孤独の少年・仔太郎は、ある理不尽な運命から逃れるべく、愛犬・飛丸と旅を続けていた。彼を追うのは、大陸から渡ってきた金髪碧眼の剣士・羅狼が率いる凶悪な武装集団。仔太郎はふとした成りゆきから危機を救われた浪人…

スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ

やっぱり紅白合戦のトリはサブちゃんじゃなきゃ 三池崇史監督が送る全編英語台詞、オールスターキャストによる、何かと話題の和製西部劇大作。 というか観れば誰もが思う通り、まんま新春スターかくし芸大会の英語劇なのだが、そもそも三池作品は常にかくし…

グラインドハウス U.S.A.バージョン

風にころがる映画もあった いつの頃からだろうか、映画館に出かけるのが億劫になってきたのは。 「やっぱり映画は映画館で観なきゃ」と封切り館と名画座をハシゴし、話題作には先行オールナイトか初日に駆けつけ、内容が無いような薄っぺらいパンフレットを…

スネーク・フライト

ヘビがジャンボでやってくる 『スネーク・フライト』は原題(Snakes on a Plane)通り、旅客機にヘビが溢れかえって大騒ぎという、もう本当にただそれだけの、潔いにもほどがある見事なまでのB級映画だ。 「ちょっと話が馬鹿馬鹿しすぎやしないか?」「でも…

隠された記憶

メタ映画への誘い ミステリ小説の手法のひとつに「叙述トリック」というものがある。物理的・心理的なトリックではなく、人称や文体といった文章の記述に潜ませた仕掛けで読者のミスリードを誘う手法だ。『隠された記憶』には映像による叙述トリックが全編に…

ホステル

性界の車窓から セックスとドラッグを求めて気の向くままにヨーロッパを旅するボンクラ3人組。「そこに行けばどんな(エロい)夢もかなうというよ」。そんな「地球の歩き方」には載っていない情報をアムステルダムで聞きつけ、足取りも軽くスロバキアの田舎…

ハッスル&フロウ

メンフィスの負け犬 勝ち組か負け組か問われたら、自信満々、でも涙目で「負け組でーす!」と吠えまくるような俺なので、負け犬が再起を誓って絶望的な戦いに挑むような映画は大好物だ。 俺はメンフィス生まれヒップホップ育ち ダメそうな奴はだいたい友達 …

007 カジノ・ロワイヤル

おまたがひゅっとします モノクロームのアバンタイトルで観客が目撃するのは、シリーズ恒例の派手で大仕掛けで能天気なアクションではない。 ざらついた心象風景のような画面が荒々しくフラッシュバックする、陰惨で無様で暴力的な初めての殺人。 しっとりと…

エリ・エリ・レマ・サバクタニ

ノイズでみるみる難病が治る(かも) 視神経から受け取る視覚情報によって感染し、自殺を誘発する奇病「レミング病」が蔓延する近未来。唯一進行を妨げる手段は、2人の男が奏でる荒々しく凶暴なノイズ・ミュージックのみだった…。 シンプルなアイディア、シ…

インプリント 〜ぼっけえ、きょうてえ〜

地獄に送れ狂った血 明治と思われる頃。かつて将来を誓い合った女性を捜して日本を放浪するアメリカ人記者がいた。とある遊郭にたどり着いた彼は、彼女を知ると言う女郎に出会い、その悲惨な最期を伝えられるのだが…。 ホラー映画の巨匠たちが各話の演出を手…

時をかける少女

紺野真琴第一回主演作品 とにかくヒロインが素晴らしいのである。 細田守監督が言うところの「アホの子」(笑)である本作の主人公・紺野真琴は、全編に渡って時空間を駆けめぐる。あまり深く考えずに、とにかく全力で走る! 飛ぶ! 食べる! 泣く! 笑う! …

SPL 狼よ静かに死ね

香港黒社会を一手に仕切る、武闘派にして家庭派のボス。超法規特捜班を率いて組織に挑む、野獣刑事。2人の長きに渡る死闘は、第三の男の登場によって、一気に戦慄の結末へと向かう。 「バイオレンス・オペラの誕生」という公開時の素晴らしく仰々しい惹句に…

親切なクムジャさん

遺族対抗鬱合戦 謀略によって男児誘拐殺人の罪で投獄された、若く美しい女性、イ・クムジャ。13年の刑を終えて出所した彼女は、真犯人への復讐計画を遂行すべく、行動を開始する。 『復讐者に憐れみを』の陰々滅々とした復讐の連鎖。 『オールド・ボーイ』の…

香港国際警察 NEW POLICE STORY

僕のヒーロー 公開から一年、遂に(やっと)DVDで『香港国際警察 NEW POLICE STORY』を観た。 ジャンルを問わず、間を置かず、自発的に映画館に行くようになってからずっと、それなりに香港映画を追っかけてきたつもりだけど、いつの頃からか「ジャッキー・…

セルラー

組長先生のイメージで 突如、正体不明の集団に拉致監禁されてしまったヒロイン。必死の思いで壊れた電話の配線を繋いでみれば、かかった先は、お調子者の青年が持つ携帯電話だった…。 随所に携帯ならではの小技を効かせた、いかにもナチュラル・ボーン・B級…

ドラえもん のび太の恐竜2006

注意。ネタバレ多数。 驚異の予告編に度肝を抜かれ、前売り券を即ゲットしてから数ヶ月。ネットではオリジナルと比較して色々と賛否両論が飛び交っている様子の問題作?を、やっと観る事ができました。 いやもう、素直に良かったです。素晴らしい! ギニャー…

ザ・ワン

ジェットはジェット最高!?(ギターウルフ調) 「善と悪のジェットが対決するんだぜっ!? ぐだぐだ文句言ってんじゃねーよっ!?」。そんな少年マガジニズムあふれる「!?」が飛び交う、逆ギレ感覚に満ちたハイパー・オモロアクション満載。並行世界の全ジェット…

ダニー・ザ・ドッグ

今日のわんこ 凶暴だけど、イノセント。例によってリュック・ベッソンが推定1時間で書き飛ばしたと思われる脚本の、毎度おなじみのモチーフが、ジェット・リーから新たな魅力を引き出す事に(だけ)成功している、奇跡の傑作。 子供の頃に極悪高利貸しに拾…

チャーリーズ・エンジェル フルスロットル

TVで久しぶりに観たけど、やっぱり素晴らしい。 徹底的に人工的なギラついた映像、ハチャメチャの限りを尽くしたアクションで、期間限定のガールズ・ライフが放つ狂騒的な輝きを描いた、唯一無二の傑作。 3人の三十路の女の子と、1人の四十路の元・女の子…

幻魔大戦

りんたろうはナカグロ入りで レンタルが150円だったので、20年ぶりくらいに観てみました。 言わずと知れた平井和正原作、りんたろう監督による、角川アニメ第1弾。 両者のファンでもなかった僕が、公開当時、劇場に駆けつけたのは「大友克洋がアニメのキャ…