訃報を知ったのは翌朝の学校へ向かうバスの中、知らない学生達の会話からだった。
観てさほど間もなかった『ブラック・レイン』での姿が鮮烈に焼き付いていて、それはどうにも信じ難い報せだった。その日に買った、クライマックス、黒のスーツ姿でバイクに跨っている彼の写真が大きく掲載されたスポーツ新聞は、今も部屋のどこかに残っているはずだ。


未だに友人と映画の話になると「松田優作が生きていたら」という話題がごく自然に上る。確実に映画界は今とは違う状況になっていたのではないか(良いか悪いかはさておき)。
少なくとも織田裕二の『椿三十郎』や妻夫木聡の『どろろ』なんて酔狂な企画は、あの人の目の黒いうちには(恐ろしくて)決して実現する事はなかったんじゃねーの、とか。