レイ・ハリーハウゼン大全
映画史において「神様」「魔術師」と謳われた特撮マンは何人もいるが、ハリーハウゼンの仕事こそは、まさに「神の御業」であり「魔法」だった。
神というよりガンコ職人が語る苦労&自慢話に満ちた一代記は、「CG?ありゃいかん」という冒頭からもう読んでて嬉しくなる。
奇跡の邦訳に、ただただ感謝。
ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
ビューティフル・フリーク
大戦中、ナチスの手で地獄から引っ張り出された「悪魔の赤ちゃん」ヘルボーイは、成長して、アメリカ政府直属の妖怪ハンターになりました。
短気で単細胞、だけどちょっぴりセンチで憎めないボーイと、彼に負けず劣らずユニークな仲間達の今回のお仕事は?
『パンズ・ラビリンス』の大成功で「俺の進んできた道は間違ってなかった!」と確信したのだろうか。
スペインが生んだ映画界屈指のオタク監督ギレルモ・デル・トロの、魔界への憧憬、異形への愛情は、いよいよもって留まるところを知らず、本作にも全編に溢れかえっている。
何せ恋に悩む傷心の怪人たちを優しく包む歌声が、イールズの大名曲「Beautiful Freak」なのだ。直球すぎる選曲だが、これが泣かずにはいられようか。
シンプルかつドライなマイク・ミニョーラの原作コミックからはずいぶんと作風が離れてきたが、大ファンゆえに遠慮がちで煮えきらない感のあった前作よりも、断然おもしろい傑作に仕上がった。
大ファンといえば、もう1人、今回は敬愛する宮崎駿監督への愛情も大全開。
『もののけ姫』『天空の城ラピュタ』『ルパン三世 カリオストロの城』といった名作からの、無邪気な引用の数々もまた微笑ましい。
OO7/慰めの報酬
『カジノ・ロワイヤル』の続編というか、後編
前編のラストで最愛の女ヴェスパーに裏切られ、その真意を問い質す間もなく死なせてしまったジェームズ・ボンド。彼女を操っていた謎の組織の正体を探るべく、世界を股にかけた血みどろの復讐行が始まる。
それは、ボンドが少しずつ己の人間味を切り捨てていく旅だ。
友情をゴミ箱に放り込み、ボンド・ガールへの欲情を忘れ、ついには復讐心すらも放棄する。
ラスト、ヴェスパーの想い出を雪上に打ち捨て、冷酷非情で任務に忠実、完璧な諜報マシーンと化したボンドの姿には戦慄を覚えずにいられない。
ここまでシリアスな路線を突き詰められると、次作を観るのがそら恐ろしくなってくる。
いきなり「美女と戯れ、美酒に酔う合間に、秘密兵器で敵組織とじゃれ合うように戦う、お気楽極楽スパイ」になって登場したとしても、それはそれで何もかもフッきれたボンド像として説得力があるように思うんですが、どうでしょうかねえ?