森達也の「ドキュメンタリーは嘘をつく」

ドキュメンタリーとは何かについてのドキュメンタリーを、そのメイキングを交えて描く、というややこしい構造を持った番組。メタ・ドキュメンタリーって感じですね。
言ってみれば森達也の「ドキュメンタリーもフィクションである」という主張の検証というか実践番組なので、映像の意図が扇情的で分かりやす過ぎ、彼の作品や発言を知る者にとって、新鮮味は薄く、物足りない。でもそれは、番組内でも「不特定多数に向けたテレビと、劇場に足を運んでもらう映画とでは、ドキュメンタリーの意味合いも違ってくる」と語られている訳だしなぁ。森達也入門、「メディア・リテラシー(メディアを主体的に読み解く力)の実践」入門としては、充分すぎるくらいの出来でしたね。


※以下、ネタバレあり。


番組には、森達也自身やレポーターの女の子を始め、著しくデリカシーに欠ける人、「いくら何でもこれは嘘でしょ」という人達が多数登場する。そのことごとくは「実はヤラセでした」とラストで明かされる訳だけど、やっぱり虚実の境目をもう少し曖昧に見せていた方が、効果的だよなぁ。バラすのもいっそエンドクレジットだけでさり気なくやった方が、衝撃的で面白かったかも。
何を撮り、何を撮らないか。編集ではどれを入れて、どれを入れないのか。ヤラセなんかしなくても、その段階でもう既に「ドキュメンタリーもフィクションなのだ」という事実がちょっとブレちゃったのは、残念。