香港国際警察 NEW POLICE STORY

僕のヒーロー


公開から一年、遂に(やっと)DVDで『香港国際警察 NEW POLICE STORY』を観た。


ジャンルを問わず、間を置かず、自発的に映画館に行くようになってからずっと、それなりに香港映画を追っかけてきたつもりだけど、いつの頃からか「ジャッキー・チェンは、もういいや」と思うようになっていた。
たぶん『プロジェクトA2』の余りのつまらなさにガックリきたのが最初で、その頃、ジョン・ウーツイ・ハークといった新しい香港活劇の担い手に出会い、夢中になった事も大きかっただろう。香港ノワールの時代が訪れつつあったのだ。
90年代後半にはもう、ハリウッドでの成功とは相反して、個人的にはほぼ見限っていたように思う。


それでも「今度のジャッキーは良いよ」と言われれば、『ポリス・ストーリー3』だの『フー・アム・アイ』だのを半ば義務感から観てはみるのだが、アクションはさておき、やっぱり映画としてはどうにもお粗末なものにしか思えなかった。
ジャッキーのせいではなく、自分がつまらない大人になってしまっただけの事。そう無理に納得してはみるものの、何だかそれは、やっぱり少し哀しかった。


そんなこんなで「今回こそは本当にもう、大傑作」という巷の評判は聞いていたものの、ずっと観るのをためらい続けてきた訳なんだけど…。
ジャッキー・チェンを見て、今、これほど激しく心を揺さぶられる事になるなんて、夢にも思わなかった。


アクションやスタントのスピード、キレは、もちろん全盛期には及ばない。CGだってワイヤーだって使っている。ドニー・イェントニー・ジャーと比較されると、素直にツラい(手抜きモードのジェット・リーには勝ってます)。
お話は時に過剰なまでに陰惨だし、完膚なまでの敗北に泣いてわめいて、文字通りゲロの海に沈むジャッキー渾身のシリアス演技も、コント寸前、失笑寸前のベタさだ。


だが、失意のどん底から立ち上がり、誇りを取り戻すべく、殴り蹴り駆け回り、飛んで跳ねて落っこちる、50歳のジャッキーを見ていると、どうにも胸が熱くなってくるのを抑えられないのだ。
そして、そんなジャッキーを助ける若き相棒、ニコラス・ツェーの「さすが、僕のヒーロー」発言には、劇場で初めて観た『酔拳』以来の想い出が一気に脳内を駆け巡り、シンクロ率100%を突破。
そう、ニコラスは正にジャッキーに憧れ、追いかけ続けてきたファンの分身なのだ。映画を観た翌日、教室の後で功夫の真似事をせずにはいられなかった、かつての子供たちは、感涙必至だろう。僕は泣きました。


映像や演出は、20年前の傑作『ポリス・ストーリー 香港国際警察』とは比較にならないくらい洗練されているものの、やはりこれは見事なまでの香港映画。本質は全く変わっていない。
ジャッキーに少しでも思い入れのある人は言わずもがな、昔あった人、これまで無かった人にも、ぜひ観てもらいたい、本当に久々のジャッキー映画の大傑作。『踊る大捜査線』なんかを観るよりは、何倍も充実した時間を過ごせるだろう事を保証します。


…って、半年前にDVDが発売されてるのに、今さら偉そうに推薦しちゃって、ごめんね、ジャッキー。