インプリント 〜ぼっけえ、きょうてえ〜

地獄に送れ狂った血


明治と思われる頃。かつて将来を誓い合った女性を捜して日本を放浪するアメリカ人記者がいた。とある遊郭にたどり着いた彼は、彼女を知ると言う女郎に出会い、その悲惨な最期を伝えられるのだが…。


ホラー映画の巨匠たちが各話の演出を手がけた、アメリカ製作のTVシリーズ『マスターズ・オブ・ホラー』の一編。
唯一の日本人監督として参加した三池崇史は、久々に本気のレッドゾーンに突入。針が振り切れた驚愕の一作に仕上げた結果、見事に放送不可能の栄誉?を勝ち取る事となった。


劇中に登場する「本物の血で描いた地獄絵図」さながら、とにかく徹底的にあらゆる禁忌を犯しまくった描写に溢れかえった映画なのだが、栗田豊通による撮影は素晴らしく美しい。特に三途の川や賽の河原を思わせる野外ロケ映像は、幽玄の一言に尽きる。
現世に地獄を創出する事が三池監督の狙いだったのは、間違いないだろう。創出しただけで、特に道徳的なものを語ろうとしないところも、ホラー映画としてとても正しいと思う。


工藤夕貴をはじめとする役者陣はそろって好演だが(ビリー・ドラゴの三文芝居の意図だけは不明)、何と言ってもMVPは、岩井志麻子。さすが原作者と言うべきか、恐怖と笑いを同時に振りまく『悪魔のいけにえ』級の怪演で、完全に場をさらってます。見事に1人で地獄を創出しちゃってます(笑)。