ホステル

性界の車窓から

ホステル コレクターズ・エディション 無修正版 [DVD]
セックスとドラッグを求めて気の向くままにヨーロッパを旅するボンクラ3人組。「そこに行けばどんな(エロい)夢もかなうというよ」。そんな「地球の歩き方」には載っていない情報をアムステルダムで聞きつけ、足取りも軽くスロバキアの田舎町へと向かった3人は、情報通り極上の美女達が待ち受けるホステルに到着。夢のような(エロい)一夜を過ごす。この世の地獄に足を踏み入れたとも知らずに…。


ホラー映画に脈々と連なる流れのひとつに「田舎はおっかねえ」というものがある。『悪魔のいけにえ』も『13日の金曜日』も、どれも都会の人間が田舎で酷い目に遭うという点で通底している。
低予算の前作『キャビン・フィーバー』でやはり「田舎はおっかねえ」と力説してマニアから注目を浴びたイーライ・ロス監督、クエンティン・タランティーノの支援もあってぐっと作品のスケールが大きくなった本作では「外国はおっかねえ」と大力説。
フリーセックス、フリードラッグで楽しそう。でもロシアン・マフィアが暗躍していて何か怖そう…。そんなアメリカ人のアバウトな北欧・東欧観が生み出す都市伝説、「消えるヒッチハイカー」ならぬ「消えるバックパッカー」を奇妙な説得力をもって映像化する事に成功している。


過激なグロ描写ばかりが取り沙汰され、確かにその手の描写も容赦ないのだが、見終わってみれば、お手軽なこけおどしを廃した意外に真っ当なサスペンス映画という印象が強い。
旅の恥はかき捨てとばかりにゆるゆると続く、下世話でお気楽なエロ紀行というか裏版「地球の歩き方」が、あれよあれよという間に拉致監禁拷問空間でのサバイバルという「地獄の歩き方」に変貌していく語り口は非常に巧みで、先読みを全く許さない。伏線の張り方のスマートさ、回収のムダの無さに感心し、ドス黒いユーモアには思わず何度も笑ってしまった。


映画のレーティングには「これのどこが?」と疑問に思う選定も少なくないが、本作の「18禁」は伊達じゃない。乳も血も特盛りつゆだく。エログロに全く耐性の無い人やカップルにはお薦めできないが、バカでスケベな全男子と、それを「しょーもな」と笑って許せる女子には、ぜひこっそり1人で挑戦してもらいたい。低俗ホラーの一言で片付けるには惜しすぎる、映画らしい映画の醍醐味がここにはある…と思うんだけどなあ。


それにしても全米興収(1週だけ)1位という大ヒットによって、スロバキアの観光産業は相当の打撃を受けたのではないだろうか?
1のラスト直後から始まるという制作中のパート2によって更なる大打撃が予想されますが、ご当地の関係各位の皆さま方はあまり怒らずに大人の対応をお願いしますね。