クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者

マタだけはガチ


原恵一監督が『戦国大合戦』で離脱して以来、長い迷走期に入っている映画「クレしん」。シリーズも15作を越えて、作る方も観る方も、いい加減に疲れているのかもしれない。
そんな停滞を打ち破るためか、最初のシリーズ監督を務めた本郷みつる監督が、12年ぶりに再登板。
「漫画映画」らしい楽しさに満ちた『ハイグレ魔王』『ブリブリ王国』、前半時代劇で後半SFな構成が潔すぎる『雲国斎』、スティーヴン・キングを彷佛とさせるダーク・ファンタジーの大傑作『ヘンダーランドの大冒険』。
映画「クレしん」の足場を固めつつ、その可能性を切り開いてきた本郷監督のまさかの復帰という事で、もう誉める気満々、GWの真っ最中、子連れファミリーで満席の劇場に駆けつけた。


……んだけれど。


ゲストキャラたちの造形やダークな幻想世界の描写、平凡な日常をじわじわと侵食していく些細な軋みや違和感等、随所に本郷監督らしさが見受けられるものの、それぞれの要素はただ投げ出されているだけで、ストーリーに有機的に絡み合わない。
散漫な流れと工夫の無い単調なアクション・シーンで、全編のテンションは終始低め。
何だかまさにここ数年のシリーズの停滞を象徴しているような、どんよりした出来栄えだった。


別に腐れ独身中年でヒネた映画ファンの僕を喜ばせてくれなくてもいいんだけれど、場内のお子様たちのテンションも過去最低で、多少なりとも沸いていたのが、ヒロシのヘンな顔とエンディングの高速ダンスくらいってのは寂しすぎじゃないかしら。


インタビューでは本作の出来栄えに自信たっぷりの姿に不安を覚えずにはいられない本郷監督には、過去の傑作『ヘンダーランドの大冒険』『シャーマニックプリンセス』『星方武侠アウトロースター』第20話「猫と少女と宇宙船」あたりを見返してもらって、猛省を促したい。